月影先生と言えば、マヤの演技の才能を最初に見出した女性です。不慮の事故で顔に重い傷を残したことで女優生命を絶たれてしまった彼女は、自分が演じてきた「紅天女」の上演権を持っており、大都芸能がそれを狙っていてることを知りつつも、絶対に譲ることはしません。

「私が上演権を譲れるのは、紅天女の後継者が決まるまでよ!」と月影先生は自分の後継者に相応しい役者を長い事探し続けてきました。とある公園でマヤが小さい子供たちにテレビドラマの話をしながらも、その役者になりきっているのを発見し、「見つけた!私の宝物。」この瞬間、マヤが紅天女に相応しい子だと見出します。

その後はライバルの姫川亜弓も、紅天女候補として挙げています。そして2人を戦わせ、どちらが本当に相応しいのか決めている最中です。

ではこのマヤの師匠の月影先生が若い頃、紅天女を演じるほどの大女優になれたのはどうしてでしょうか?その過去をさかのぼりますと?月影先生は子供の頃尾崎一蓮の出会いで、大女優になれたのです。

尾崎一蓮とは、紅天女の作者でもあり、月光座の座長を務めていました。月影千草と芸名を付けたのも尾崎一蓮です。月影先生の本名は名字は分かりませんが、下の名前は千津でした。

千津は孤児であったため、小さいながらも盗みを働いていました。そこを目撃、助けたのも尾崎一蓮であり、千津を引き取って女優として育てて行きます。太平洋戦争後、幻の名作・紅天女の物語を書き、月影先生に紅天女に相応しい女優としての指導をします。

日ごとに美しくなっていく若き月影先生は、段々尾崎一蓮に愛されていくようになり、また彼女も彼に魅かれて愛し合うようになりました。一蓮の執筆した紅天女は大成功をおさめ、また月影先生も大女優として成長を遂げました。

そして尾崎一蓮と月影先生はついに結ばれました。ですが大都芸能の執拗な嫌がらせのため、一蓮は自分の持ち手であった月光座を手放し、紅天女の上演権を月影先生に託して自殺してしまいました。

ですから本当の紅天女の上演権の持ち主は、尾崎一蓮だったというわけです。その彼の遺志を継いだのが月影先生なんです。折角一蓮と結ばれながらも、自殺に追い込んだ大都芸能が許せない…それが真澄の継父・英介で、尾崎一蓮と月影先生の敵でもあったということになります。

月影先生はそんな暗い過去があったのですね。ですからいつもしつこく大都芸能に紅天女の上演権を譲る話を迫られても頑なに断り続けていた理由がはっきりとしました。

月影先生は心臓病を患っていますので、何としてでも自分の命があるうちにどうでも紅天女の後継者として、マヤと亜弓を選んだのです。

元大女優として、私の代わりに見事な紅天女を演じて欲しい!月影先生はマヤと亜弓に厳しい特訓を梅の里で受けさせました。それほど紅天女は難しい役で、育て上げるまでには相当時間がかかっています。

女優とは、今その瞬間を役になりきって演じるとても大事な仕事です。常にテレビや周囲から見られ、どのように評価されるのかが実に見ものです。

そういうことになりますと、マヤは本当にいい演劇の指導者に出会えて幸せだと言えます。