印念中佐の企みにより、九州の小倉からシベリアに送られてしまった少尉は紅緒と折角愛しあえるようになったのに、無残にも引き裂かれて辛いながらも紅緒との手紙のやり取りをしていました。

紅緒の手紙を読んで笑っている少尉の姿を見て面白くない集団がいました。それは小倉連帯の隊員たちです。どの男性も不良っぽく、ヤクザまがいの仲間はずればかり。その部下たちを少尉が隊長として仕切ることになりました。

その中に鬼島軍曹の姿がありました。鬼島の顔には頬に切り刻まれたような傷跡、そして左目は失明し、何とも怖いつらの顔立ちをしていました。実は鬼島は幼いときに両親を亡くし、田舎の親戚の家に引き取られていましたが、彼の母親が芸者だったので、「芸者の子供」として親戚からは疎ましい存在であったのです。ですから近所の子供達からも「芸者の子供の森吾!」とバカにされ続けて辛い幼少時代を過ごしてきました。

森吾とは鬼島の下の名前で、フルネームは鬼島森吾です。物語では鬼島軍曹と呼ばれており、詳しい本名までは触れられることはありませんでした。

鬼島が幼少時代にある男性を長い事待ち続けている若い女性「ゆきの」に母親の面影を重ねていました。ですがこのゆきのという名前の女性は女郎だったのです。昔女郎は世間からとても白い目で見られる職業で、当然小さかった鬼島にはそのことは理解出来ず、ゆきのと付き合っていました。

ですがそのゆきのが雨の中を逃げ出した時に、村人たちから追いかけられ、それを阻止しようとした鬼島が村人に突き飛ばされて、運悪く鋭く突き出ていた木の枝に左目がささってしまい、大けがをしたのが原因で失明してしまい、頬にも傷跡が残りました。

女郎の逃亡は大昔は罪であり、鬼島の前でゆきのは自殺を図ってしまいました。ですからその後の鬼島は今で言う不良少年になってしまったのです。

最初は東京から来た少尉を「どうせ根性のないおぼっちゃん将校だろうぜ!」とバカにしており、昼間から日本酒を飲むなど、仲間とわざと少尉に対して言うことを聞かないことをしていました。「気に食わない野郎だぜ!」と少尉を嫌っていました。

部下が言うことを聞かない少尉は、鬼島と喧嘩になり、その仲間たちまで加勢しようとする卑怯な手段を取ります。そんな時にシベリア本部の上官に喧嘩を阻止され、少尉は隊長として上官に殴られます。

鬼島は「喧嘩のこといいつけてもいいんだぜ、少尉さんよ。どうせ俺たちは嫌われ者のならず者だからな。」でも少尉は決してこれは喧嘩じゃなく、戦いに向けての練習だと言い張ります。つまり少尉は部下たちを庇ったのです。

その言葉が原因で、少尉の連帯はシベリアの前線への戦いに送られる羽目になり、これがきっかけで鬼島をはじめとするならず者隊員たちは少尉を見直し、隊長として認め、敬礼をします。

そして鬼島と少尉の間に友情が生まれたのです。遥か遠いシベリアの空の下で。

シベリア前線に送り込まれた少尉とその隊員たちは、何とか無事に日本へ帰れるために戦い抜こうと誓い合います。鬼島はそんな少尉を信じ、少尉もまた鬼島を信じ、2人は固い絆で結ばれました。

ですがコサック兵との戦いで、鬼島は銃で足を撃たれてしまい、動けなくなってしまいました。1人の隊員でも見捨てることの出来ない少尉は鬼島を助けに向かいましたが、運悪くコサック兵に襲われて刺されてしまい、突き落とされてしまったのを目の当たりにし、その後逃亡兵としてまたもや悪人に戻り、満州で馬族になってしまいました。

ですが偶然満州で紅緒と出会ったことで改心しました。