足を怪我して動けなくなった鬼島を助けようとして、運悪く少尉は敵兵に襲われ、刺されて崖から突き落とされてしまいました。そして一度は戦死と伝えられ、紅緒は少尉の葬儀の時に「軍人の妻の証」として母の形見の白い喪服を来て、長い髪を切り落とし、一生誰にも嫁がないと誓います。

そして少尉の亡きあと、伊集院家を守るために働きます。

その頃ロシアでは日増しに戦いが酷くなり、大雪の中を逃げ惑う貴族の姿がありました。女性の名前はラリサ。吹雪の中、倒れている男性を見つけます。ラリサはハッとして途中ではぐれた夫のサーシャではないかと思うのでした。

ですが人違いだとすぐに判明しました。サーシャは敵の御取りになって、すでに殺されてしまいました。でもあまりにも夫に瓜二つ!ラリサは倒れているこの男性がサーシャに似ていることから、亡くした夫の身代わりにしようと考えだすのでした。

それが少尉だったのです。少尉は敵兵に刺された時の大けがと崖から突き落とされたショックで記憶喪失になってしまい、ラリサは少尉の記憶喪失を利用して「あなたはサーシャミハイロフ公爵。私の愛する夫です。」と教えます。

少尉を自分の夫に仕立て上げることに成功したラリサは、彼を同行させてロシア亡命から逃れるために日本へやってきます。ですがすぐに紅緒に死んだ少尉に似ていると気づかれてしまい、近づいてくる紅緒を疎ましく思うのでした。

サーシャと日本で暮らすことにしたラリサは、狸小路の屋敷に滞在します。そして日本語の勉強をします。でもこの時ラリサは日本語ペラペラでしたね。何処で覚えたんでしょう。そんなに日常会話が出来るほど上達が早かったのでしょうか。

記憶喪失だった少尉は、紅緒との再会で「あの子どこかで見たことがある。」と思いだそうとします。ラリサには少尉が記憶を取り戻すのが一番怖く、そして紅緒が奪い去っていくのではないかと不安を感じていました。

ラリサはその後結核を患い、寝込んでしまいます。重い病気ですっかり気が弱くなった彼女は少尉に頼り切ります。

その頃少尉は日本にやってきた鬼島と偶然再会し、その時には記憶がすでに戻っていました。鬼島は紅緒のために名乗ってほしいと頼みますが、今はそれが出来ません。理由は自分の命を助けてくれたラリサを見殺しには出来ないと思ったからです。

ラリサはサーシャが殺された代わりに、少尉を放そうとせず、紅緒の前では「あの人は私がいなければ死んでいた。だから私のものよ。」と言います。病魔にむしばまれていく彼女はいつしか少尉を死んだ夫に重ねながらも、愛し始めていました。

少尉が記憶を取り戻しても、「あの人はサーシャ!私の夫です。」と言い張ります。まあ何と言いますか往生際が悪いですね。

紅緒が本当に少尉が自分の元に帰ってきてくれたんだと喜びますが、どうしてもラリサがネックとなり、三角関係になりかけました。

そして一度は他人の夫の身代わりになった理由で少尉を嫌いになった!と紅緒は伊集院家を出て、実家に戻ると少尉はラリサを伊集院家に向かえて療養させます。

紅緒への愛情は変わらない少尉でしたが、何処にも行く当てがないラリサも見捨てることが出来ず、苦しんでいました。一度は本当に身を引く決心をした紅緒ではありましたが。

ラリサは紅緒にとっては邪魔な存在で、折角生きて帰って来た少尉になかなか近づけませんでした。でもラリサはそんな少尉を助けてくれた恩人で、感謝すべき女性でもありました。

でもラリサ自身も少尉を自分の夫の身代わりをさせたことは反省していました。ですから根っからの悪女ではありません。