ガラスの仮面のヒロイン・マヤの母親の北島春は、夫に先立たれてから中華料理店の住み込み店員として働いていました。ですからマヤの頭には父親の記憶はありません。

1人娘を育てるために、春は一生懸命働きました。小さかったマヤもそんな母親の手伝いをしながら小学校、中学校に通っていました。

マヤがテレビドラマが好きで夢中になって見ていると、「何だい、またドラマなんか見て。そんな暇があるんなら勉強するか、母さんの手伝いでもしな!」と叱りました。父親のいないマヤは母親1人の手で育てられて横浜で暮らしていました。

ある日、中学校の出し物で演劇をすることになったマヤのクラスは、マヤが日頃から演技が上手なことを皆が知っていたので、演劇に出すことを推薦します。早速母・春に学校の演劇に出ることをマヤが報告すると、「へえ~、お前が劇に出るなんてねぇ。」と一度は喜びます。

ですが数日後マヤが選ばれた役は、ビビという名前の貧乏で間抜けな人間の役でした。春は「ふふ、お前のやる役なんて所詮そんなものだよ。」とけなしてしまいます。でもマヤは月影先生から「この劇では一番難しい役だ。」と言われ、どうやったらビビになりきれるのか考えるようになりました。

いよいよ学校の出し物の当日が来て、マヤは春に「母さん、お弁当持って私の劇見に来てね。」と言います。しかし春は弁当を用意しながらも、自分の娘がみっともない役で皆の笑いものの種にされるのかと思うと何とも恥ずかしい、情けない気持ちになってしまいました。そして弁当を中華料理店の娘・杉子に託してマヤの劇を見に行くことはしませんでした。

その頃学校で春が来るのを待ちわびるマヤでしたが、時間になっても母さんは来ません。悲しくなるマヤ。そしてとうとうマヤの出番が来ました。マヤはビビの仮面をかぶり、見事に演技きり、会場の観客に拍手喝さいを浴びました。

その頃春はそうとも知らずに店の掃除をしていました。通りかかった人から、「マヤちゃん、上手に演じたわよ。」と聞き、春は驚きました。「マヤが…まさか、あの子が!」

その後しばらくしてマヤは、春に女優になりたいことを打ち明けます。ですが春は「女優になるだって?そんな夢みたいなこと言ってるんじゃないよ!お前にそんな能力なんかありゃしないよ!」とこれまた娘を否定します。

マヤは確かに美人ではないし、学校の成績もよくありません。でも月影先生の助言で家出同然で、マヤは劇団つきかげに入団。春は月影先生がマヤをそそのかしたと思いこみ、無理矢理マヤを連れ戻そうとしますが、「母さん、どうしても私、お芝居がしたいの!」「そうかい!もうお前みたいな娘はいらないよ!」と春は姿を消してしまいました。

マヤの母親・春は女優になりたいなどど夢みたいなことを言った娘がどうしても許せませんでしたが、結局許すこととなり、月影先生にお詫びの手紙とマヤをよろしくと綴りました。

やはり母の手1つで育ててきた春は、毎日仕事、育児と時間に追われていたので、マヤの隠れた才能を見出すことまでは出来ませんでした。忙しすぎて自分に余裕がなく、マヤを叱ってばかりいましたから。

マヤが出て行ってから2年後、春は結核を患い、中華料理店の住み込み店員を辞めさせられてしまい、サナトリウムに向かう列車の中で週刊誌に載ってるマヤを発見しました。丁度「嵐が丘」の主人公キャサリンを演じた時のマヤの姿に春は驚き、初めて娘の才能を誉めるのでした。

ですが春は元気なマヤと再会を果たすことなく亡くなってしまいました。