女学校時代から紅緒の親友・北小路環(きたこうじたまき)は公家出身のお嬢様で、育ちがよく、紅緒とは正反対の美人、成績優秀の女性です。ですから家事全般は勿論得意で、沢山の男性と交際するなど、紅緒をはじめとする周囲の同級生たちを唖然とさせました。

そんな男性との交際の多い環ではありましたが、実は彼女は小さいころから思いを寄せていた意中の男性がいたのです。それは何と紅緒の許嫁の伊集院忍少尉でした。

環は公家の育ちであっても、近代的な女性であり、「親の決めた結婚なんかまっぴら!」と宣言していました。「好きな男性と結ばれてこそ結婚の価値あり」と彼女の頭の中ではいつもそういう考えであったのです。

ですから紅緒が親の決めた縁談話を環に相談すると、「紅緒じゃ恋愛はね…!」と言いますが、「そんなこと言ってる場合じゃない!」と紅緒の縁談の破談を応援しようとします。でもその紅緒の相手がまさか自分の好意を寄せている少尉とはまだ気づいていませんでした。

一方の環も紅緒に「実は意中の相手がいて、見事に失恋しちゃった。」と打ち明けます。紅緒は「まさか~!」と思いますが、環の好きな男性は一体誰なんだろう?と興味を持ちます。そしてオペラ見学に環が紅緒を誘い、劇場前で待ち合わせると何と!少尉の姿が!

親友の紅緒の許嫁が自分の好きな少尉だと分かり、大ショックを受けた環はその場を立ち去ってしまいました。その後紅緒を避けるようになりますが、紅緒が見習い花嫁ぶち壊し作戦で少尉に愛想をつかされるようにする提案を環に話すと、彼女は紅緒をまた応援するようになります。

その後紅緒が伊集院家へ見習い花嫁として乗り込むと、環は何とか紅緒が縁談を壊すことに成功し、少尉が自分の方へ向いてくれることを願います。ですが肝心の紅緒も段々少尉に魅かれ始め、ときめきを感じるようになりました。

少尉が友人を招いて園遊会を開いた時に、環も招待客で招かれます。紅緒が縁談ぶち壊し作戦に苦悩していることを聞くと、少尉を呼び留めて2人きりで話しをします。そこで少尉が紅緒に対して「この家の古いしきたりを壊してくれるのは彼女しかいないんだ。」と少尉も徐々に紅緒に魅かれ始めていることを知ると、環は少尉の心の底には紅緒しかないと認めて、身を引く決心をしました。

でも自分の好きだった少尉の許嫁が紅緒と分かって、一度は衝撃を受けた環もそんな紅緒の幸せを願うようになり、引き続き親友として付き合っていきます。

女学校卒業後、環は婦人記者となって活躍します。職業婦人になっても相変わらず紅緒との親友関係は変わることなく、紅緒の良き相談相手でもありました。

少尉と同じ公家育ちで幼馴染だった環は、大学進学はせず、ひたすら職業婦人の道を歩きました。元々自由な恋愛をしたがる彼女は新しい恋を目指しつつ、仕事も頑張りました。

戦死と伝えられた少尉が実は、サーシャミハイロフ公爵と名乗っていたことが分かり、物語は意外な展開をしつつも、環は意外な男性に魅かれ始めます。その男性と言うのが、少尉の部下の鬼島軍曹です。

初恋の人少尉とは全然性格の違う、一見乱暴そうに見える鬼島軍曹ですが、実はとても心優しい面があり、一度は紅緒が好きだったことも環は見抜いています。

鬼島軍曹は「バカやろ~!」「なんだと!」と言葉を荒げる所が多いのですが、とてもテレやな男性でもあります。素直じゃないんですね。それでも環は鬼島が好きになりました。

関東大震災後、鬼島は満州へ帰っていくと環は彼を追っていきました。まさしく押しかけ女房です。行動的な彼女です。