紅緒の隣りの家に住む藤枝蘭丸は、歌舞伎役者を目指していました。彼も紅緒と同様に母親を小さいころに亡くし、紅緒が蘭丸の母親の代わりとして得意の剣道などで蘭丸を鍛えようとしていました。お転婆で男勝りの紅緒とは幼馴染ではありながらも、蘭丸はそんな紅緒が好きでした。いつか結婚出来るのではないかと思っていました。

でも結局は片思いにしかすぎず、紅緒の縁談が決まるとさすがに大ショックを受けてしまいます。ですが女性心のある蘭丸、役者根性からして結構行動的な女形さんです。

紅緒と「駆け落ちしましょう!」と大胆発言します。紅緒はまさか蘭丸が自分を好きで、愛していたなど夢にも思っていませんでした。渋々蘭丸のかけおちに同行するも、でも蘭丸の思っていたような駆け落ちにはなりませんでした。

駆け落ちの途中で、車引きの牛五郎と紅緒が喧嘩となり、負けた牛五郎が紅緒を親分と呼ぶようになり、居酒屋で駆け落ちどころか返って紅緒に酒の味を覚えさえ、酒乱にまで発展させる羽目になってしまいました。

そこで偶然居酒屋にやってきた少尉と逢い、蘭丸は少尉に対して「僕は紅緒さんが好きだ!」と恋敵宣言をします。

暫くして紅緒が伊集院家へ見習い花嫁として「すぐに追いだされて帰るつもり。」と言ってなかなか戻らない彼女を心配して、ここでも蘭丸は大胆行動に走ります。それは伊集院家のメイドとして乗り込んできたのです。

紅緒の気持ちが少尉に行かないように、牛五郎と騒ぎを起こす蘭丸です。彼は本当に小さい時から紅緒一筋だったんですね。髪型まで洋髪に変え、こういうときこそいかに女形型役者が役立つと張り切る蘭丸でした。

ですがメイドに化けていても、とうの少尉にはすでにバレバレでした。それに少尉は紅緒が蘭丸のことを好きじゃないことも分かっていましたから、周囲には何も言わなかったんですね。メイドの蘭丸が実は男だと言うことを。

でも酒場で印念中佐と喧嘩になった時、紅緒が危険にさらされそうになって蘭丸は勇敢にも「紅緒さんに何をする!」と喧嘩相手に立ち向かっている所も見せています。女形さんでも好きな女性を守ろうとする男性の本能が蘭丸にもあったんです。結局は突き飛ばされてけがをしてしまいましたが。

でも少尉が運悪く転属でいなくなっても、蘭丸は引き続きメイドとして伊集院家に居座り続けます。でもそんな紅緒を見ているうちに蘭丸は女性の心から、紅緒が少尉を心から愛していることに気が付きます。そして少尉の戦死の公報が入った時、紅緒を助けたい!と懇願しますが、紅緒の説得により、家に戻って役者修行に戻りました。

それでも蘭丸はやはり紅緒の手助けをし続けていました。一度は死んだと思われた少尉が記憶喪失により、サーシャミハイロフ公爵の身代わりとされ日本に来たときには役者本能からか、少尉とすぐに見破っています。

その後はヨーロッパで歌舞伎役者公演のため、出番はありませんでした。帰国後、紅緒が少尉に愛想をつかして伊集院家を出て、実家に戻ってきているのを知り、その原因がラリサであることを話すと、「なんで簡単に諦めちゃうの?取ってもいいんじゃない!」と説得します。この時の蘭丸は何とも男らしいです!素晴らしい!

蘭丸には紅緒が少尉を激しく愛しているのをもう分かっていて、諦めました。ですが紅緒の間違った判断にはちゃんと抗議するなど、本当に蘭丸は紅緒のことを真剣に思っていたことがよく分かりました。

心は女性的でも男らしさを見せてくれた蘭丸でした。ですが彼は余りにも考えだしたことをすぐに行動的に移すなど本当に大胆すぎる所が多かったとも言えます。